2015年10月25日日曜日

登山規制について。

『ようやく阿蘇登山の規制が解除されましたねーっ!』と書こうとずーっと待ち構えていましたが、残念ながら私の予想に反して1ヶ月をとっくに過ぎた今も未だに噴火警戒レベルは3のままで、登山規制も解除されていません。

特に欧州系のゲストさんは山歩きするために阿蘇に来られる方がほとんどですので、そういった方々に、『山歩きは現在のところ全く出来ないんですよ(根子岳など一部山登り可能ですが、車が無ければスタート地点まで行けません)。』と伝えるのは、お客さんにとってはケンタッキーで『すみません、ただ今チキンを切らしておりまして…。』と言われるようなもんで、みなさんテンションダダ下がり。かなり落胆されます。伝えるこちらもツライです。


阿蘇ベースは結構山歩き押しの宿でもありますので、この山歩きが規制されている状況では、山歩きを目的にされている方に、『山歩きはできませんけど、阿蘇に遊びに来てくださいねーっ!』などと言う気には到底なれません。


宿屋の主人が『ツライ』などとのたまおうと大勢に影響は無いでしょうが、規制が解除される前にここはひとつ阿蘇の宿屋の主人のひとりとして不満を表明しておこうと思います。



つい先日、“噴火警戒レベル:研究者「機能せず」41%” という毎日新聞の記事がアップされていました。


噴火警戒レベル3の据え置きはまだ数歩譲って理解できます。しかし私が特に不満に思っているのは2Kmの円の外にある山の登山規制です。先日の新聞報道でも、規制引き上げのきっかけであり、全国的に報道された9月14日の噴火では、低温の火砕流(巻き込まれたら直ちに命は無い、というものではない)は半径1km以内、噴石の飛散は半径500メートル以内であったとのことです。


その噴火時に適用されていた半径1km規制の警戒レベル2では結果的に死傷者をひとりも出さず済みましたが、今はレベル3です。レベル3時の標準的な規制距離は半径2km(“概ね2km以内”という表現)です。グーグルマップで距離を測ると杵島岳の頂上は火口の煙が噴出しているところからから約2.7km、烏帽子岳は2.8km。規制区域外の草千里レストハウスも約2.8kmほどです。私は登山規制はせず、2km規制だけで十分じゃないかと考えてます。


じゃあ何かあった時お前が責任取れるのか、という反論があったとするならば、そんなもん取れるわけないだろうと答えるでしょう。開き直り、とか逆ギレとか言われそうですが、基本的に山登りなんて自己責任、“At your own risk”であるべきと考えます。
責任問題になってしかるべきなのは大きな噴火につながる可能性のあるデータをキャッチしていながら、適切にその情報を開示していなかった場合に限るはずです。

ご存じの方も多いと思いますが、御嶽山の噴火で多数の犠牲者が出てしまった後から、噴火警戒レベル1の説明を「平常」から「活火山であることに留意」に改定しています。そらそうだ、と全然納得しますけど、意地悪な見方をすると、予測が出来なかった時の責任の所在を分散する狙いもないことはないでしょ、という気もします。

仮に今現在、自己責任で杵島岳、烏帽子岳に登ってよいとなったら私なら躊躇なく登りますね。命を粗末にしているわけでも決死の覚悟で、という訳でも当然なく。まず大丈夫だろうという自分なりの判断からです。

もちろんそれで突然の大噴火が起こり墳石に直撃されて死んだとしても、それは仕方の無いことで、登山禁止にしなかった規制する側の責任ではないですよね。

『安全第一』、ごもっともです。しかし安全か危険かどうかの判断をもう少し、それぞれの個人に委ねてもいいんじゃないかと個人的には強く思います。規制する側は、『警告はしたよ。あとは勝手にして。何かあったら責任は自分で取ってね。』という態度で構わないと思います。


というか私思うのですが、多数の犠牲者が出てしまった御嶽山の噴火でも先月14日の阿蘇の噴火でも、噴火7分前には、はっきりした噴火の前兆を捉えていたとのことですから、その瞬間に昔の空襲警報みたいなサイレンが山上一帯に大音量鳴りわたるようなシステムを作るくらい、今の時代そんなに難しいことなのかなあと思うのですがどうなんでしょう。5分間でも必死に逃げれば1km近くは離れられるし、1kmまで行かなくてもその間に避難した距離が生死を分けることもあるかも知れませんし…。



それにそもそもの話、阿蘇の山なんてそこらじゅう火口跡だらけです。現在規制なしで観光客に開放されている草千里だって元はと言えば火口跡です。今後未来永劫、現在唯一活動中である中岳火口からしか噴火しないとは限らないでしょう。前兆は必ずあるでしょうが、上昇するマグマが横に逸れて草千里で噴火発生、などということが今後一切絶対ないとは専門家の方でも言えないはずです。

つまり確率の問題であり、阿蘇の山では1000年待ったって絶対安全になんてなりません。それならば草千里をぶらぶら歩くことと、中岳火口からはほぼ同距離である杵島岳に登ることは、そこまで危険度に差があるものなのか、と思うのです。


先日NHKで“巨大災害 MEGA DISASTER 第4集 火山大噴火”という番組を放送していてなかなか興味深かったのですが、その中で阿蘇で9万年前にあった規模のカルデラ破局噴火が起きた場合のシュミレーション映像を、映画『2012』を彷彿させるような大変迫力のあるCGで作っていました。南北25km、東西18kmの阿蘇カルデラ全体、地中の巨大マグマの中に“落ちて”いて、『こりゃ、ヒャクパー死ぬな。まあ知ってたけど。』と、もう苦笑するしかありませんでした。


その番組によると、噴火10分後には800℃という高温の火砕流が福岡の街に到達するそうで、その火砕流が街を飲み込む映像もありました。私達は自ら選んで阿蘇に住んでいるので仕方ないですが、火山など普段特に意識しないであろう福岡の人たちはかわいそうだなー、となんだか同情してしまいました。



話が少し逸れましたが、寒くもないし暑くもない山登りにもってこいのこの季節、とりあえずはよレベル2まで戻すか、せめて登山規制だけでも解除してくんないかなぁ、と願いつつ過ごす噴火後の日々です。